新しい人生が始まるというわくわく感

父が家を建てたのは、私が中学生の時でした。
ある晩父が
「家を建てるんだ」
と言いだしたときの衝撃は忘れられません。
「お城を建てるんだ」
といっているように聞こえました。ずっと賃貸暮らしだった私たち家族にとって、一軒家を建てるというのはお城を建てるのに等しいことでしたから。
それから徐々に忙しくなりました。私たち子供は口を出すことは許されませんでしたが、両親は夜遅くまで家のことを相談していました。どんな間取りにするか、何が大事か、どんな家でどんな暮らしにしようか、若かった両親は希望に燃えていました。

とうとう家が完成したその日、車で新しい家を訪れました。
「カーブを曲がったら見えるから」
といわれて窓から身を乗り出すようにして外を見つめていると、私たちの家が姿を現しました。けして大きくはありませんが、それは夢のお城でした。白い壁が日光にぴかぴか光っているようにさえ見えました。

家の中に入ると、新築の家特有の、なんともいえない香りが漂っていました。私たち家族はみんな、わくわくして家を探検してまわりました。自分の部屋があることを知って感動しました。そして家族全員がリビングに集まったとき、
「ここから新しい人生が始まるんだぞ」
と父がいいました。
「おまえたちの人生はここから始まるんだ。ここから学校に通って、ここで勉強をして、人生の土台になる時期をこの家で過ごすんだよ」
完成したばかりの家は静かでからっぽでしたが、期待に満ちあふれていました。

カテゴリー: 未分類 パーマリンク